洋画感想連想記

息をするように洋画を鑑賞して10数年です。海外ドラマも好きです。

“制限”には良さもあると思う 映画『レイダース 失われたアーク《聖櫃》』など

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去年、iPadApple Pencilを手に入れました。

もともと絵をかくのが好きなので、これでデジタルで絵を描けるぞと大喜びし、手元に製品が届くとすぐに、いろいろリサーチして決めた「Procreate」というお絵かきソフトを導入しました。

 

ところがいざ使ってみると、使えるブラシの種類の豊富さに圧倒されてしまいました。

使い始める前までは、たくさんのブラシがプリインストールされていることに大変な魅力を感じていたのに、実際に使おうと思うとそれが難しかったんです。しかも、その膨大な量のブラシひとつひとつを自分好みにカスタマイズすることができるんですが、これも私を大いに惑わせてきました。

「どれを使おう」と考えるだけでめまいがする。ぼかしたり色を混ぜたり、ほかにも本当にいろんなことができるので、機能や使い方を覚える必要がある。そう思うとどんどん息苦しくなって、私はソフトにもデジタルお絵かきにも急速に興味を失っていき、半年くらいでやめてしまいました。

 

それからしばらくして、ためしにAppleのソフトである「Pages」を使ってみたんですが、驚いたことにこれでのお絵かきはかなり楽しむことができました。本来はお絵かきではなく文書作成を目的としたアプリなんですが、何が良かったのか考えてみると、それは「選択肢が少なく自由度が低いこと」にあったのだと思いました。

ブラシの種類は3種類だけですし、線の太さも5種類からしか選べません。かすれ具合とか筆圧がどうとか、そういう設定はできませんし、レイヤーという概念もありません。この制限が、私には心地よかったのです。

 

要するに、プロではない私には、不自由なのではないかというレベルの機能があれば十分だったわけです。

24色しかない色鉛筆、5色しかない水性マーカー、白い画用紙、これだけだったほうが逆にいろんな工夫ができます。この「工夫ができる」という「余白」が、私にとっての自由であり、安心につながっているということなんだと思います。制限されているのに自由がある、という一見すると矛盾しているような状態が心地よかったわけです。

 

 

話は変わって、最近、インディ・ジョーンズ作品のうち、最新作4作目『クリスタル・スカルの王国』(2008)と、1作目『レイダース 失われたアーク《聖櫃》』(1981)を立て続けに鑑賞しました。

 

この2作品を観て思ったのは、まず「相変わらず先住民とかアジア系の描き方がえぐいな」ということと、「制限があるがゆえの良さがあるな」ということでした。

 

ここで「制限」と表現しているのは、技術的な面での話です。

 

レイダース 失われたアーク《聖櫃》』の有名なシーンとして顔面が溶ける描写がありますが、あれはCGではなく実際に溶ける頭を一から作って撮影しているんですよね。これって現代の技術があれば、もっともっとリアルで自然な溶解シーンに仕上げられるはずです。でも、私は手作りの表現にも十分魅力を感じます。

 

最初のスターウォーズとかもそうですが、人類以外の種族がすべて手づくりスーツを着た人間が演じている感じがいいですよね。ジュラシックパーク1作目に登場するラプトルも精巧なロボットですし、ETもグレムリンも作り物です。

21世紀の技術を知っているからこその意見なのは承知していますが、やっぱり人間が頑張ってアナログで表現している映画は面白いものです。数年前大ブームになった『カメラを止めるな!』だって、低予算でもいろいろ頑張っているからこそ味があって良かったとも言えそうですよね。

 

もちろん、ものすごくリアルなCG表現の良さだってあります。

現実にはありえないものでも、本物みたいに映像化されていたらリアリティが増します。そうすると、俳優たちの素晴らしい演技と相まって、なんというか映画がサマになるんですよ。アメコミを実写化したとき、脚本を文学的にして敵や戦闘シーンを超リアルにつくれば、それは“子供向け”ではなく“大人向け”に昇華されるように思います。いや、昇華されるというか、そうであって初めて大人も楽しめる作品になりうる、と言ったほうが正確ですかね。トビー・マグワイアスパイダーマンが大好きなんですが、これとのちのアメイジングスパイダーマンの印象が違うのには、映像技術という側面の差もあるような気がします。

とにかく、昨今のコミック作品の実写化が盛り上がる理由のひとつには、「超リアルな映像を作る技術」にある気がします。

 

インディ・ジョーンズを観て、自分のデジタルお絵かきの経験を思い起こしたのでこの記事を書いたんですが、結果としては「制限が自由を生むという話」と「技術の進歩の話」を並べた構図になってしまいました。

文章を書くのは初心者ですので、ちょっと見逃してください。。

 

とにかく、制限というのは、ある程度であれば存在しているほうがいいのかもしれないと思った、今日この頃でした。